6/5「の、なかに」座談会with友森昭一さん伊藤新さん

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2005年制作「の、なかに」20分
7月14,16,17,18日映画「父の愛人」ロードショーに併映。新宿K’s cinema 13時〜
出演 飯塚朋子 仲田天使。
プロデューサー 伊藤新
音楽 友森昭一

「の、なかに」について、

友森昭一さん(オートモッドのギター(布袋寅泰の後任)としてメジャーデビュー。以降は、レベッカ、RittZ、宮原学、デラックス、氷室京介、奥居香、藤井フミヤ、大塚愛、鬼束ちひろなどのバンドで活躍)

伊藤新さん(現在TVCMディレクター)

と監督の迫田公介の3名にて下北沢cafe and bar KAMERAで語り合いました。
以降、友森昭一さんを(友森)、伊藤あらたさんを(あらた)、迫田を(迫田)。

(迫田)今日は、「の、なかに」のことを語るということでゲストに
音楽を制作頂いた友森昭一さんとプロデューサーをやっていただいた伊藤新さんです。
よろしくお願い致します。

(友森)(伊藤)よろしくお願いしますー

(迫田)この作品は2005年という…、はるか8年前の作品です。。。

(友森)(あらた)笑

(あらた)僕は、印象的だったのは、オーディション、この子の、主演の
飯塚朋子さん、オーディションをやったときに、ほぼ何もやったことない、演技やったことない子だったんだよね。他にもっと芝居のできるというか、芝居っけがあるひとがいて、
僕はその子のほうがほうがうまいんじゃないかってのがあったんです。

(友森)キャスティングね

(あらた)はい、それをすごい覚えていて、それをこっちの方が絶対いいんだって、迫田が
そこを確固たる意志をみせたという、

(迫田)唯一の?笑

(あらた)唯一ではないけど笑。なんかそれが印象に残っているというか、それが良かったんじゃないかと。

(迫田)あーそうだ思い出した、オーディション何人かやらせてもらって、もうひとり決まってたんだ。それであらた(伊藤)の知り合いで飯塚さんというひとがいてオーディションを追加で受けさせてほしいみたいなことがあって、もうオーディション終わってたのに、けっこう無理して、新たの家で飯塚さんのオーディションやったんだ。

(迫田)それで演技やったことなくって、でもダンスをやっていて

(あらた)そうだ、ダンスだ

(迫田)映画にダンスのシーンがあるっていうくらいの接点でオーディション応募してくれたんだ

(迫田)それでそういう家の中でのオーディションという環境悪い中、飯塚さんがナチュラルで

(あらた)そうね

(迫田)センスが、芝居のセンスがすごいなって思ったんです。演技経験ないのに

(あらた)そう、それが重なるじゃないですか。このストーリーと

(迫田)あ、そうか

(あらた)この主人公が、えっと名前が…

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(迫田)タカバ

(あらた)そう、タカバが、夢を持っていながらも…、くすぶってるかんじ?
そして最終的に一歩踏み出すっていうか、それが演技経験無い子がやるっていうのが
はまったんじゃないかって

(迫田)相手役の仲田天使。さんが演技とてもしっかりされていて、要望にもすぐにこたえてくれるというか、飯塚さんを支えてくれたというか、僕もいつも支えてもらってというか

(迫田)僕はこの「の、なかに」という作品は映画学校で「この窓、むこうがわ」を撮って
その翌年に撮ろうと思った作品で、次に行こうと思って撮った作品だから、やっぱりその当時は、いまはちょっとかんじが違うんだけど、やっぱ上に行こうと思ってたときだったので
もがいてたときだったので…あらたくんに頼んでー

(あらた)やっぱいっつもそういうの出るよね笑。脚本に出るよね笑。

(迫田)うん、出る笑

(迫田)だからもう新たは経験がしっかりとあったし、制作周りもしっかりとやられているプロだったし、それとやっぱり音楽を友森さんにお願いしたという俺らの度胸っていうか

(あらた)うなずく

(友森)僕も、なにも用意ができない、家に録音機材も無い状態で無理矢理作ったから笑

(迫田)(あらた)笑

(友森)なんか、冬かなんかで…、なんかもう、寒い日に、あの僕は暖房とか嫌い
だから寒い部屋で、あのーだから寒い寒い言いながら作ったんですけど笑

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(迫田)(あらた)笑

(友森)そんで、MDラジカセがあって、それとMDステレオの録音できるやつ、ポータブルレコーダーみたいなのが一台ずつあって、それを使ってステレオマイクを立てて、それに向かってアコースティックギターとか弾いて、今度それをMDでスピーカーから流してまたマイクを立てて、その流れている音源に合わせてそれに音を重ねる、MDのピンポン録音みたいなかんじで作ったんだよ

(友森)だからちゃんとした録音状況でじゃないから、音響設備が整ってないところでやったから、でもこれはこれで面白いのかなと思って

(あらた)あ、そうだったんですね、そのときどうやって録ったんだろうって気になってたから

(友森)ラインだけでやると、ラインぽいペタっていう音になっちゃって、たぶん、冷たい感じが出ちゃう。

(迫田)(あらた)うなずく

(友森)多少、ノイズが出ちゃうと思うんだけど、空気を通したぶん、マイクをたてて空気を通した分、それがまたエフェクト効果になるかもって

(迫田)特にこの物語って映画館のなかで展開されるものだから、この室内のこもったというかそういう雰囲気があったほうが良くって、クリアすぎると、それは変で

(友森)そうね、日本の映画って割と、向こうの映画と違って音楽と台詞のバランスが
微妙じゃないですか、日本のやつってけっこう台詞が聞き取りにくかったりして、音量あげられないと、音量下げた状態でサウンド流れていると、それは逆に必要ないんじゃないかって。今度は音楽上がりすぎて台詞が聞き取れないっていうか。そのバランスが難しいんじゃないかって思ったけど、それはあとでそちらに任せようかなって、設備もなかったから笑。
でもそれで一応録ったんだけど、だけど録るときにもMDでスピーカーからながしてマイクとの間にエンハンサーって言って、音をエキサイダーみたいな音を立ち上げるものをかましたりして無いなりに努力したんです笑

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(迫田)(あらた)笑

(迫田)この音楽を制作いただいたときって、映像をお渡ししたんでしたっけ?

(友森)えっと、いやまず脚本もらって、それからね音の無いね、タイムが下に流れている

(迫田)TC(タイムコード)つきの

(友森)映像をもらってそれに合わせて作ったんだよね。それで細かい何分何秒までの
、それでこういうシーンです、割とシリアスなのとか滑稽なかんじとか、何パターンか録ったと思うんだけど

(あらた)僕は音楽的に一番印象に残ったのは、このシーン、(指差す)彼女がひとりになる、なってあの台詞がなくって、音楽だけがバーっと盛り上がっていって

(迫田)ああ。。。

(あらた)そこが一番印象に残ったかな、それのそれ迫田が言ってた映画館のなかでの音響、っていうのとマッチして

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(友森)そこからエンディングまでの間のやつですよね?

(あらた)はい、そうですその前の

(友森)それがそうだよね。そう、それがけっこう悩んだんです。

(あらた)タッチが難しかったと思いますし

(友森)そう、それに、だいたいここあたりから出すんじゃないかと、想定して
2パターンくらい録ったんだよね、たぶん2、3パターンくらい作ったんじゃなかったかな。もし手前から使うことになったらとかね

(迫田)INOUTを僕らはあまり決めてなくって、けっこうルーズにしていて、それで
たしか音楽途中で切らせてもらって。。それって大変失礼にあたるからそれですごい、大丈夫かなって

(あらた)怒られないかなって

(友森)笑。それはもう、編集してくれるんだろうなって想定して笑。出したからそれは全てお任せします!みたいな笑

(迫田)あのとき、編集は新たにやってもらって、仕上げも新たに全部やってもらって

(あらた)そう、

(友森)やっぱりこういうショートムービーって言うんですか、こういうのってあまり音楽を詰め込まないほうが良いと思うし無音のところの緊張感っていうかものが、時間を分かんなくさせるじゃないですか

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(迫田)はい、ただ音楽っていうのは作品にものすごく影響を、どえらい与えるから、あのもちろんやってくださる才能というか、センスというのを自由にやっていただきたいから、けど僕らの作品を考えるタッチというか、それを話し合ってやるの醍醐味なんだけど、たぶん「の、なかに」を僕が演出しているとき、演出力というのがまだまだだったのか、すごい助けられてばかりで、音楽に助けられて、、、助けられてばかりですみません

(友森)(あらた)笑!

(あらた)音とか、音楽とか、台詞とか含めた音響全体って、映像の半分音じゃないですか、画が半分、音が半分、僕はこの作品の編集したけれど、画の編集はできるけど、音というか音響全体の設定というか雰囲気というか、その音楽の、これは友森さんに相当、友森さんのお力が大きかった

(迫田)大きい

(友森)もう実験的にやってるんで、これが良しとされるか分からないけど、イメージでやってみようって

(迫田)じつは「この窓、むこうがわ」と「の、なかに」っておなじようなことを言いたいっていうかテーマというかながれているものは似ていると思ってるんですけど、「この窓~」が良いっていうひとと「の、なかに」が良いっていうひとがほんと半分に別れてて、「この窓~」が良いっていうひとは「の、なかに」がだめで、「の、なかに」が良いっていうひとは「この窓~」がだめっていう、不思議な現象が

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(伊藤)そうなんだ、不思議だね、似たようなテーマなのに

(迫田)うん、不思議。

(迫田)ぼく、この「の、なかに」という作品って勉強になったというか、僕は「この窓、むこうがわ」を映画学校内で撮って、そのときは生徒たちが分からないなりにわいわいと撮った感じだったんですが「の、なかに」ってカメラマンの多田さんとかもそうだしみんなやっぱりもうすでにきちんとやっている技術の方とかもそうで、僕自身はあまり現場にいった経験もなかったので、撮影のだんどりもわかってなかったし体制のこととかも、音楽のこととか音のこととか、「この窓」のころはまだ全然自分が甘くて、とかを思い知ったというか。チームワークのこととか、全て甘かった。けど「の、なかに」でそういうことを思い知ったし、勉強にとてもなったというか。

(あらた)うなずく。

(友森)なんかこれ不思議に思ったんだけど、このお風呂が、お風呂のシーンが多いじゃないですか、このバスタブがいきなりあるっていうの日本人以外のひとが見たらどう思うのか笑。日本ってぜんぶこういう感じなのかみたいな笑

(迫田)(あらた)笑

(友森)この時代とか設定とかよく分からない感じでさ笑

(あらた)ここって、こういう場所だったんだっけ?こういうバスタブが置いてあるかんじの

(迫田)そうそう、それ活かしで、幽霊役の仲田天使。さんが原案作っていたのを
撮らせてもらって、

(あらた)そうだった。この場所ありきで作っていったんだよね

(迫田)それで、このメインヴィジュアル(お風呂に入っている主人公が手をあげて
来るな!みたいなスチール写真)ホラー映画に見えるらしく笑

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(あらた)そうそう、見える笑

(迫田)それでスウェーデン行ったときにさ(Umea国際映画祭招待上映)向こうのお客様に
ホラー映画だと思って来たんだけど、って言われたもん笑

(あらた)あ、ほんと!笑

(友森)このなんかウルトラQ的な

(あらた)(迫田)笑

(迫田)そのスウェーデンのとき、短編プログラムで「この窓、むこうがわ」
とか一緒にながれたんだけど、このイメージヴィジュアルが強いということで
そのプログラムのメインイメージで、新聞とかプログラムとかで出て

(あらた)うん、強いもんね

(迫田)だからその日本映画短編特集のプログラムをこのヴィジュアルみて
ホラー映画特集のプログラムだと思っていらしたお客様がけっこういて笑。

(あらた)笑

(迫田)それで、全然ホラーじゃないじゃんって言われて笑、
ほら幽霊とか出てくると解説には打ってあるから

(あらた)ああ、そうか

(友森)この写真見て、想像したら、すごい怖そうだよね笑

(迫田)そうなんです笑

(友森)黒い家みたいな

(あらた)(迫田)笑

(迫田)そしたらまさかのあのコミカルな幽霊が

(あらた)(友森)笑

(友森)血とか出てこないからね笑

(友森)でも、シュールな映画だよね

(あらた)変わったタイプの幽霊ですよね笑

(友森)この2人の出演者さんたちすごく滑舌よくて聴きやすかったよね

(あらた)そうですね。

(迫田)ぼく、この飯塚さんとても才能あると思ってるし、いま芝居とかは
やられてないらしいんだけど

(あらた)ダンスやられてるんだよね

(迫田)うん、僕が好きなタイプのお芝居なのかもしれなくて
よく分からないんだけどいわゆるこの芝居っぽい芝居をしないひとだから

(友森)そう、けっこう独りでしゃべるというか独り言みたいなシーンも多かったじゃない

(迫田)はい

(友森)声だして独り言、みたいなのを芝居やったことないひとがやるのって難しいと思うんだけど、意外とさらっとね

(迫田)そうなんです。さらっと。すごい才能が、すごいあると思うんですよ。だからこれご覧になったら、是非、また芝居を!

(迫田)「の、なかに」それぞれのお立場、当時でも良いんですが、今回ご覧頂く方々にメッセージを、あれば

(迫田)あ、そうだ、伊藤新くんはいまのお仕事は

(あらた)はい、TVCMのディレクターを。やってます。

(迫田)「の、なかに」のプロデューサーをやった後に、CMのほうに行って、ディレクターになったって聞いて、僕はなににもならなかったけど、あ、今はちゃんとやってるけど、なんかすごいなって思ってました。(視線を外し動揺した様子)

(あらた)(友森)笑

(あらた)誰に向かって言ってるの笑

(あらた)そうですね。最初のその飯塚さんのはなしと重なるんですけど、なにかになろうとする。なんか後押しのような力があると思うんで。

(迫田)僕らも当時そうだったし

(あらた)何者でもない笑。そういった方たち、やっぱりたくさんいらっしゃると思うので
ご覧頂いて、なにか感じていただければなと思います。

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(友森)僕の立場でなにを言えばいいのか笑

(あらた)(迫田)笑

(迫田)楽しくやってもらえました?

(友森)笑、そうそう、僕、迫田くんと初めて会ったときのことを映画化してもらいたくって

(迫田)笑!!

(友森)いきなりそのレストランでガス爆発が起こって笑

(迫田)廊下に逃げ出してみたいな笑

(友森)そう、あのことがなければ、一生忘れられない出会いになったし、あれがなければ
この「の、なかに」の音楽にってならなかったと思うし笑

(友森)僕も初めてのことだったし、こういう映画という物語に音楽をつけたの、大変だったけど一応がんばりました!そのとき一生懸命がんばった

(迫田)ぼくも必至でした

(あらた)じゃあ、その爆発のを次は

(迫田)助監督の船木くんに撮らせて(この座談会のスチール写真を横で撮っている船木くん)

(あらた)(友森)笑

(迫田)僕からいうと、今回上映されるのは「この窓、むこうがわ」「の、なかに」「父の愛人」と3つの作品を上映するんですが、どの作品も、必至だったなと

(あらた)(友森)そうね。

(迫田)鼻血も出てたし

(あらた)笑

(友森)そうね。いま思うと、そのとき一生懸命やったからいま振り返れるんだと思うんだよね。そりゃ完成して観て、課題が残ったなと思うことがあるかもしれないけど、俺も初めてやったけど、悔いの無いことやってるなって。

(迫田)(伊藤)うなずく

(迫田)必至だったです

(友森)僕の場合はそのとき、設備が整ってなくてみたいなことあったけど、なければないで頭つかって無いのを想定して、やるし、何が正解か分からないしね

(迫田)良く聞くのは、ハイバジェットで予算がたくさんあって潤沢に撮影するよりも
かつかつでそれでも色々手を考えてのほうが作品にパワーが生まれて

(友森)そうね、逆手にとってアイデア勝負にいくっていうね

(迫田)そのとき、できることは全てやった

(友森)そうね

(迫田)必至でした。ぼくはそのとき新たにおんぶにだっこで相当苦労をおかけしたけど、もう僕の全てを出したことだけは言えるし

(あらた)笑

(友森)あと、作業やるにあたって、ほかのひとがどうやるのかとか、普通どうやるのか、全然考えずにやったというか、全て自分の想像で作り出す、こういう作品ではそういうやり方が良いと思って。誰かの真似になるのも嫌だし、なんつうんだろう、まったく情報がない状態でやってやろうと思って、そのほうが面白いかなと思って。作業、ほんと楽しかったんですよ。

(迫田)「の、なかに」はあのテーマ曲でしかないと思って、その塩梅というか、重々しく
あの映画のことをお客様に伝えるよりも、軽快すぎるのも違うし、そのバランスを本当に助けてくださったです。

(迫田)今日はほんとにありがとうございました!

(友森)(あらた)ありがとうございました!

(迫田)今回、7年前の作品が上映になるとは、素晴らしいことだと

(友森)そうだよね。映画って一生残るっていうか

(迫田)幸せですし、本当に撮ってよかったなあと

(友森)そう、これからもどんどん作って

(迫田)はい、なんとか、がんばりたいと思ってます。

(迫田)それでは、ありがとうございました!

(友森)(伊藤)ありがとうございました!